[景気]
2010年9月に入って、厳しい残暑が続く中、先週2010年8月28日の263号にあるように、円高による危機感から企業では、産業の空洞化加速の懸念が広がっていると報道されている。現地生産、逆輸入の検討が進みつつある。経済産業省は、2010年8月27日、円高による影響に関する緊急ヒアリング結果を公表した。企業ヒヤリングによる生の声の直接調査した結果で、他の調査結果も同様であり、政府の
緊急対策が求められている。
[政策]
2011年度の予算の概算要求が2010年8月31日に締め切られ、各省の2011年度の重点施策案がまとめられたことになる。今後の国会審議や事業仕分け、そして、予想される補正予算等につながる。経済産業省では、新成長戦略実現アクション100--市場機能を最大限活かした新たな官民連携の構築-の中で、新たに成長を主導する戦略分野-高機能・単品売り型産業から、システム売り/課題解決型/文化付加価値型、の産業へ-では、環境・エネルギー分野における技術開発の重点化・加速化や医療・介護・健康関連産業(ライフ・イノベーション)分野が、地域経済・中小企業の活性化-多様性に対応した支援策の展開-では、「ものづくり指導者養成塾」の立ち上げ/ものづくり基盤技術の高度化支援が、そして、「技術を価値につなげる」研究開発と国際標準戦略の推進-「技術で勝って、事業でも勝つ」事業戦略への転換-等が直接、機械技術に関係して重点に取り上げられている。
[産総研]
独立行政法人産業技術総合研究所は企業の経営層、研究者・技術者、大学・公的研究機関等を対象とした「産総研オープンラボ」を、2010年10月14日・15日に開催する。
昨年同様、来場者の登録、事前のラボ予約が、2010年9月1日より開始された。約340の研究テーマのパネル展示と説明のコア会場、つくばの研究室(ラボ)約150箇所を公開致する。研究者自らによる装置・設備の紹介、研究成果内容の説明、議論の場を設ける。詳細は、産総研オープンラボ受付開始に掲載されている。
<新エネルギー>わずかな温度差で発電
九州工大宮崎康次准教授
ビスマス・テルル合金の熱電変換を利用、材料に多数の数十ナノの穴で従来比2.5倍の変換効率
日経産業新聞2010年8月27日
<マイクロ>自動車AT向け超寿命・軽量のピニオンシャフト
日本精工株式会社
独自素材と熱処理で耐久性疲労強度の向上、熱変形曲がりを抑制、20%軽量化
日経産業新聞2010年8月26日 日刊工業新聞2010年8月24日 ホームページ2010年8月24日
<生産>NCデータの検証(切削データの不具合検出)ソフトウェア
株式会社アルモニコス
数値入力ミス、工具形状・機械形状の考慮不足による加工ミスや材料・工具の破損を低減、画像処理演算装置で高速化
日経産業新聞2010年8月23日 ホームページ
<生産>マグネシウム合金の連続曲げ加工技術
フジ精工株式会社
世界最薄レベルの25マイクロメートル1)を視野に入れたMg合金コイルの箔圧延技術
日刊工業新聞2010年8月23日
<生産>自動車、産業機械、航空機向け歯車の品質保証
菊地歯車株式会社
高精度歯車測定器、3次元測定器の体制整備
日刊工業新聞2010年8月26日
<生産・ロボット>立体映像と触覚や力覚に関する錯覚を利用して触感や手応えを提示
産総研ヒューマンライフテクノロジー研究部門中村 則雄主任研究員
人間の錯覚を利用して高感度な触力覚を連続的に提示し3Dテレビと組合わせ、手術シミュレーターや3次元CADへ応用
ホームページ 日経産業新聞2010年8月26日
<自動車>卵形の歯車の追加で燃費を20%改善
京都大学工学部物理工学科機械システム学コース小森雅晴准教授
1速から2速へ滑らかな変更、2酸化炭素の減少と乗り心地改善
毎日新聞jp2010年8月26日
日経産業新聞2010年8月26日 日刊工業新聞2010年8月26日
<ロボット>「喜び」「怒り」等の感性でロボットを制御する実験
長岡技術科学大学工学部中川匡弘教授
16個の頭部の電極から脳波を計測し、事前採取データとの照合で車いすを制御
日刊工業新聞2010年8月23日
<ロボット>自転車向けのパワーステアリング
東京電機大学ロボット・メカトロニクス学科 岩瀬将美准教授
ハンドル操作における安定性確保、電動アシストに利用
日経産業新聞2010年8月24日 ホームページ
<ロボット>円形ロボットで自在な移動
東北大学石黒章夫教授
14組の放射状伸縮装置の水圧で環境変化に適応する自律的な移動、粘菌の動きを参考
日経産業新聞2010年8月26日
[景気]
経済3団体の日経連、経済同友会、日本商工会議所のトップは、菅直人総理大臣と2010年8月25日に会談し、経済界側は急激な円高や株安への懸念を表明し、2010年6月に閣議決定した新成長戦略の前倒し実施などを求めたと報道された。日本経団連米倉弘昌会長と経済同友会桜井正光代表幹事は、2010年9月に予定されている民主党代表選での首相続投への支持を会談後、記者団に表明した。
この急激な円高により、株価は値下がりを続けており、日経平均株価は8900円を割り込む状態になっている。マスコミの論調でも、円の急騰を止める緊急対策を政府に求める声が高い。企業や家計の心理が冷え込み、景気の腰折れを懸念しており、政府・日銀は、円高阻止に向け市場介入を選択肢に入れる姿勢を主張している。政府と日銀の対応に注目が集まっている。
[国際]
企業の想定為替レートを超える急激な円高を受けて、主要企業において、収益への悪影響に対する対策が開始され、生産体制見直し、追加のコスト低減、海外での製品値上げ、海外シフトの加速、為替リスクの低減等が進んでいる。今回の動きは国内生産の空洞化や雇用の流出に拍車をかけかねない。日本企業は過去に何度か円高局面を乗り切ってきてるが円高対策は限界にきているとも報道されている。記録的な残暑続く中、今後の経済状況の急展開に目が離せない状況が続いている。
[政策]
各省は2011年度の概算要求のとりまとめを急いでいる。厚生労働省は、2010年8月26日に、既卒者の採用企業に奨励金を支給する雇用支援事業が盛り込まれていると報道されている。現在、検討が進んでいる補正予算に関連する、経済対策名目で計上される事業の継続も見込んでいる。今後、各省の概算要求が次々と発表される。
経済産業省は2010年8月10日に「次世代エネルギー・社会システム実証」のマスタープランを公表した。実証4地域(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市(京都府)、北九州市)が選定され、19地域からの提案書も公開されている。
<新エネルギー・環境>太陽熱利用の空調システム
三菱樹脂株式会社 ユニオン産業株式会社
熱交換器の吸着材から水分を取り出す熱に太陽熱を利用、低温熱の利用
日経産業新聞2010年8月20日 参考:吸着式冷凍機
<マイクロ>回転精度20ナノの静圧空気軸受
株式会社三鷹精工
ノズル形状や精度、個数を制御して2倍の精度 注:ものづくり中小企業製品開発等支援補助金の支援
日刊工業新聞2010年8月20日
<マイクロ>デジタルホログラフィー技術で瞬時3次元画像計測装置
京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科粟辻安浩准教授 田原樹大学院(D1)
2方向偏光抽出素子アレイをCCDカメラに装着、数マイクロメートルの微小部品製造における検査へ適用
日刊工業新聞2010年 8月20日
<マイクロ>10m離れて製品欠陥の検出
つくばテクノロジー株式会社
実構造部材を伝わる超音波信号を映像化、形状や欠陥・傷の非破壊検査
ホームページ 日刊工業新聞2010年8月18日
<生産>内径内側の曲面を削り出しで自動加工
株式会社理想精密
4軸マシーニングセンターと独自工具でL字管を削り出し、段取り替えなし
日刊工業新聞2010年8月20日
<生産>セラミックス材に40マイクロメートル径の穴あけ
レーザージョブ株式会社
発信機の波長、光学系の制御で0.3mm厚にテーパーなし微小穴加工
日経産業新聞2010年8月20日
<生産>電子ビーム溶接で熱交換パネル製作
株式会社MPS
2枚の金属板を電子ビームで「縫い合わせる」溶接、液圧で膨らませて成形
日刊工業新聞2010年8月17日
<生産>シクロヘキサン採用の真空浸炭炉
光洋サーモシステム株式会社
浸炭ガスの高い安全性、浸炭ガス消費量を1/2に削減、気化時の状態を安定化
ホームページ 日刊工業新聞2010年8月18日
<生産>アルミ合金の拡散接合法
株式会社ヤマテック
A5052やA6063向け、ステンレスより軽量化、ロボットや熱交換器へ適用
(財)相模原市産業振興財団
<医用機器>立ち上がりの筋力回復を支援
株式会社ジェー・ピー・イー 信州大学繊維学部河村隆准教授 上田腎臓クリニック
荷重センサーと体重を計測で負荷調節して立ち上がり動作をモーターで支援
日経産業新聞2010年8月18日
[景気]
全国的的な猛暑が続く中、夏休み後の本格的な経済活動が再開されている。主として海外景気の下ぶれ懸念による円高や株式相場の低迷から、政府は景気判断について一段と慎重になっていると報道されている。政府は景気判断について従来からの判断を据え置いているが、エコカー減税の終了等を受けた経済対策は9月初旬の開始に向けて調整中と報道されており、総理大臣と日本銀行総裁の会談も2010年8月23日の週に実現される見通しが報道されている。
[学術会議の回答]
日本学術会議は、2010年8月17日、政府及び関係機関への回答「大学教育の分野別質保証の在り方について」を公表した。100ページの文書で、学士力を中心とする分野別の質保証の枠組みについて、学士課程の教養教育の在り方について、大学と職業との接続の在り方についての3部に分けれている。そして、専門的職業人として一定の専門性を担いつつも、専門性の垣根を越えて、良き市民として共に働く-協働する-知性を育てることが重要であると結んでいる。今後、各分野の参照基準作成の作業が開始されるという。工学分野における調査とその結果公表が待たれる。同様に、学術会議を中心に続けられている、総合工学委員会の考え方についても今後の関連する議論の進展が予想される。
[はやぶさカプセル展示]
独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2010年8月19日に、はやぶさカプセル展示の来場者10万人を突破したと発表した。今後は、2010年8月26~30日に日本科学未来館、2010年9月11・12日にJAXA角田宇宙センターで展示をする予定である。夢を実現した実物の展示であったことや夏休み中であったこと等を考え合わせる必要があるが、ものづくり最先端技術での日本の底力を確認したということに対する広い層からの支持の表明であると見ることができる。従来、日本が得意とは言われてこなかったシステム技術への地味であるが継続した努力への敬意が示されている。今後の研究開発への取り組みに結びつく分析・評価のフォローアップが待たれる。学生等の若い年齢層への理工学分野へのインパクトにつながることを期待したい。